新月の兎
そう声がして、私は顔を上げました。

輝く金の髪が、大きく波打っています。
この季節に白い半袖のワンピース1枚では寒いでしょう。
それに、驚いたことに裸足ではありませんか。

ぴょんぴょこ。

兎はいつの間にか私のすぐ隣にきていて、ほんのり、雲のかかった月のように白く輝いています。

「まって…!」

あの女性はこの兎を追っているようです。

きっと、この兎が逃げてしまったのでしょう。それで、あの寒そうな格好のまま追い掛けてきたのです。裸足なのも、慌てていたから。きっとそうです。

私は1人、納得して、捕まえなくては、と思い兎に手を伸ばしました。

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