新月の兎
カンカンカン。

音が響きます。
上がっていくにつれて、ほてった体が冷まされていくように感じました。

「追い詰めた…」

私は女性と並び、寒空の下、兎にジリジリと近付きます。

「動かないでねー」

呟きながら。
兎は目を赤く輝かせ、キョロキョロと逃げ道を探しているように見えます。

ぴょん。

兎はアパートから空へと飛び出しました。

「危ないっ!」

私は叫ぶことしかできません。

すると、隣をすっ、と女性が通り、空へと飛び出していくではありませんか。


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