白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「タカがさぁ、美穂ちゃんに食べさせたいって言って、クレープおみやげに買ってたよ」
「ちょっとぉ!言わないでくださいよ。恥ずかしい……」
照れるタカのそばに近付いた美穂は、タカの頭に手を乗せた。
「タカ、ありがと」
みんなはホッとした表情でふたりを見つめていた。
うん。
これでいい。
何もなかった。
何もない。
「じゃあ、とりあえず…… ここで解散ってことになるな」
先生が、体育の先生っぽく言った。
腕を組んで話す姿は、高校時代に見ていた先生だった。
「要君以外の人は、それぞれカップルで楽しもうな。要君は…… まぁ、ひとりで何とか楽しんでくれ」
先生は要君の肩に手を置いて、その手で肩をバシバシ叩く。
「いいっすよ。俺は…… みんな楽しんできてください」
要君は、明日はどこへ行こうかなぁと独り言のように言って、みんなが笑った。
「俺と慎司とタカはいいとして…… ひとり心配な人がいるなぁ」
そう言って、先生が視線を向けたのは…… 翼先生だった。
「ちょっと!!何言ってんですか。俺は別に…… 何も…… 緊張なんてしてないし!!」
ひとりで慌てる翼先生。
相当緊張しているみたい。
そりゃそうだよね。
桃子との初めての旅行で、いきなり告白しちゃって、その上一緒の部屋に泊まるなんて!!
「直ぉ~!どうしよう」
小声で桃子が私に言う。
嬉しいような困ったような桃子の顔がとてもかわいかった。