白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「別れるなんて考えたこともないです。……美穂はさっきどんな様子でした?」
「タカがあんな風に怒ることが滅多にないから驚いたって言っていたな。タカは、美穂ちゃんのことちゃんと好きだし、不器用なだけだからって言ったら、そうですねって笑っていたけど」
タカには言わないけど、確かに俺にも言っていた。
“直がうらやましいな”と。
それは違うだろうと思ったが。
“先生に愛されたら幸せだろうな”とも言われた。
それも違う。
美穂ちゃんの彼氏はタカであって、タカはタカだから俺と比べるのはおかしい。
突然タカが、俺みたいになったらおかしい。
冗談で言ったんだと思ったが、タカの話を聞いて、もしかしたら本気で直をうらやましがっているのかも知れないと思った。
こんな展開は予想していなかった。
俺も、もちろん直も……
こんなことを予想していたら、この旅行の計画は進まなかったと思う。
直は、やきもちやきだけど、自分の周りの友達が俺をどう言っても、そのことには嫉妬しなかった。
それは、友達を信じているから。
だから……
もし、美穂ちゃんが俺に対して特別な感情を抱いたりしたら……
直は立ち直れないんじゃないかと思った。