白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「ちょっと思い出しちゃうな…… グアムの朝食」
先生は、眉を少し下げながらそう言って、グレープフルーツにかじりついた。
ちょうど私も思い出していた。
まさか、途中で帰ることになるなんて予想もしていなかったけど。
あの朝食……
楽しかったなぁ。
「ま、今日から第2回新婚旅行だからな。泥棒に感謝だな。あれがなければ、北海道に来ることもなかったかもな」
久しぶりに言ってみる。
「グレープフルーツになりたい」
先生は、グレープフルーツに唇をくっつけたまま、驚いた顔で私を見つめた。
「さすが、直だな…… 俺マニア」
覚えてるよ。
高校時代、まだ片想いだった頃、先生が“グレープフルーツの飴が好き”って言ったこと。
「俺に食べられたいって意味?」
「違う!!違うよ、本当に!先生が幸せそうに食べてるから」
「やっぱりそうだろ?俺はお前を食べるときも幸せそうだろ?」
小声でそんなことを言う先生。
きょろきょろと周りを見回した後、先生が言った。
「部屋に戻ったら…… 直をいただきます」
私は何も答えられないまま、オレンジジュースをおかわりする為に席を立った。
恥ずかしいよぉ。
先生、どうしてあんな真顔であんなことが言えるんだろう。