白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「桃ちゃん?」
「ひゃっ!」
ただ名前を呼ばれただけなのに、ビクッとして、変な声を出してしまった。
明らかに変な期待しちゃってる私。
「俺と同じ部屋で嫌じゃない?」
挙動不審な私を気遣って、ほど良い距離を保ちながら話しかける翼先生。
「は、い。嫌じゃないです。翼先生こそ、嫌じゃないですか」
お互いに目をそらしているのがわかる。
翼先生は、テレビのリモコンや冷蔵庫を触っていた。
「嫌なわけがない。でも、いきなり同じ部屋で泊まるなんてことになって…… 桃ちゃんを困らせちゃったかなって」
「困ってないです!!」
ぎこちない会話。
直と先生はどうしてあんなに自然に話せるんだろう。
私もいつか、あんな風になれるのかな。
ロボットみたいに変な動きの私。
エアコンのスイッチをいじってみたりして。
とにかく落ち着かない。