白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~



「直はかわいいな」



先生は、立ち止まってラベンダー畑を見つめている私の頭に手を乗せた。


急にそんなことを言われると、どうしていいかわからなくなる。



「どうしたの?急に……」


「ん?直はかわいい。直と一緒だと楽しい。この景色も、直と一緒だからより綺麗に見えるし、感動できるんだよ」



遠い目をした先生。


先生はまだ、高校生の私達を見ているようだった。



「思ったことは思った時に言わなきゃな。明日のことは誰にもわかんねぇから」



私は先生の腕をぎゅっと強く掴んだ。


なんだか今、一瞬不安になったんだ。




「どした?」



「変なこと言うから、心配になったの」


「死ぬと思った?」



静かに頷く私に、先生は言う。




「死なないよ、俺は。でも、人生何があるかわかんねぇからな。毎日後悔しないように生きていきたい。だから、思ったことを言った。直、愛してるよ」




照れくさくて、走り出す私。





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