白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「新垣先生なら、そんな失敗しないだろ?」
「そんなことはないですけど…… やましくないなら、奥さんに言えば良かったのに」
喜多先生は、俺にとって完璧な先輩であり、憧れの教師だった。
喜多先生は生徒から人気があるが、喜多先生自身から“男”の部分を感じることはなかった。
喜多先生は、絶対に生徒とどうにかなったりしない。
奥さんと家庭が1番大事って雰囲気だし。
喜多先生は、生徒から告白された時、どんな風に対応するんだろう。
興味があった。
俺は何度そういう経験をしても、自分がまだ正しいと思えなかった。
もっと良い断り方があるんじゃないか、と悩んでいた。
喜多先生、その教え子に対して、何か特別な感情があったのだろうか。
喜多先生に限って…… と思うけど、喜多先生だって、男だし。
「どうして内緒にしたんですか?」
「言えば良かった。本当にそうだよ。言えば、笑顔で送り出してくれただろう。黙っていたから、怪しまれるんだよな。はぁ……」
ため息をついて、ガックリと肩を落とす喜多先生。