白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「本当はゆかりの胸で泣きたかった」
「直……」
私はゆかりの口にドーナツを運ぶ。
ゆかりはびっくりした顔でドーナツをほおばって、私の口にもドーナツを近づけた。
「私がたっくんと離れている間、直はいつも私のこと気にしてくれててさ。先生とのラブラブ話もあんまりしなくて、それが直の優しさだなって思った。いろいろ心配かけてごめんね」
「こっちのセリフだよぉ。ゆかりはいつも私が辛い時、自分のことのように一緒に悩んでくれて、助けてくれた。ありがと」
ストローに顔を近づけて、チューっとミルクティーを吸う。
ゆかりも真似して、同じように吸う。
私にとって、ゆかりはこの世界の中でたったひとりのかけがえのない存在。
ゆかりがいない人生なんて考えられないくらい。
「先生が見たら嫉妬するよね」
ゆかりはそう言って、私の頭を撫でた。
「もう本当に大丈夫?私には本音を言ってよ?」
ゆかりは、私の顔をのぞき込むようにして、上目遣いで私を見る。
本音……
自分でもよくわからない。
本当の心の中は、まだ美穂のことを許していないのかもしれないし、もう許しているような気もする。