白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「よくわかんないんだぁ」
「そうだよね」
ゆかりは、ドーナツの表面の砂糖をツンツンと突っつきながら、遠い目をした。
「私だったら、もう会わせたくないって思っちゃう」
ゆかりは、視線を窓の外に向けたまま、呟くように言った。
「それが本音かも……」
私も呟く。
北海道で美穂と仲直りができた時、美穂とは今まで通りの関係に戻れたと思っていた。
でも、あの出来事が私の心から消えることはない。
もしもまた美穂があんな目で先生を見つめたら……
と思うと……
「それが正直な気持ちだよ。別に自分を責めることないよ。直は優しいからすぐ自分を責める」
ゆかりは優しくそう言ってくれた。
誰にも言えないけど、正直な心の奥の気持ちはそうなのかもしれない。
できれば、しばらくは先生に会わせたくない。
美穂が先生に抱いた気持ちは、確かに“恋心”だった。
その気持ちが一時的だったとしても、美穂にとって先生が理想の男性であることは美穂自身もわかっていること。
そして、私も先生も、美穂に会うたびにあの出来事を思い出してしまう。