白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「お~い!!」
映画のワンシーンのように爽やかに。
たっくんが俺達に向かって手を振る。
どんなに大事にしていても、傷つけてしまうことがある。
もしも、少しでも相手への気持ちが違う方向へ向けば…… 失ってしまうことになる。
たっくんは、また少しイイ男になったんじゃないか。
直と中田は、アイスクリームが食べたいと言って、ふたりで手を繋いで走っていく。
俺とたっくんは、砂浜に腰を下ろし、彼女の後姿を見つめる。
「ねぇ、先生」
「何?」
俺の方が黒いが、たっくんも結構色黒。
俺はサングラスを頭の上に乗せ、たっくんを見る。
「ゆかりと付き合ってる俺はモテるんだけど、別れたらモテない。笑えるくらいに」
「中田を失ったお前は、魅力がないってことだろ」
俺から見てもそうだった。
中田と別れたことを後悔しているたっくんは、元気がなくて、顔色も悪く、覇気のない声で、ため息ばかりついていたから。