白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~



「今は、モテんのか?」



「もうモテない。と言うか…… 情けないくらいに落ち込んでたからね。みんな俺が彼女と別れたからだって知ってるから、もう近付いてもこない」




俺は、アイスクリームの屋台の前に立つ直に視線を送る。



「まだまだだな。たっくんは……」



自分がモテるとか、モテないとか…… そんなことは重要じゃない。




「モテなくなったから、中田とやり直したのか?違うだろ?」



「もちろん!そんなんじゃないよ」



「またモテるようになったら、たっくんはよそ見するのか?」





たっくんは、誘惑に弱い。


誰にでも優しいから誤解されやすいが、誰からも好感を持たれる性格。




「そうだよな。そんなことは関係ない。先生なんか俺よりもっとモテるのに、全く隙がないもんな」



たっくんは、足を伸ばし、砂浜に寝転んだ。




俺も寝転ぶ。


背中が熱い。



太陽が、大きな雲に顔を隠したので、目を開けていられる。




「でも、直を不安にさせてしまうよ。今でも……」



たっくんは驚いた顔をした。




幸せそうに見える直だけど、結婚してまだ間もないのに、泣かせてしまった。



教育実習の金森のことで、直が家を飛び出した。



もうあんな涙は見たくない。




俺は目を閉じる。



そして、“神田由利”からの手紙を思い出した。






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