白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~



“由利姉ちゃんに渡した手紙覚えてる?”



神田は、意味深にそう言って、教官室に誰もいないことを確認した。




手紙?




情けないけど、覚えていない。



当時の俺は、そんなことをしていたのか?




俺はきっぱりと、“恋愛感情は100%ないし、全部誤解だ”と神田に言った。





思い出す。


必死に思い出そうとしたが、飯田に手紙を渡した記憶は見つからない。




あのクラスは、問題児がたくさんいて大変だったことは覚えている。


その時に、飯田には助けてもらったような気もするし、そんなこともなかった気もする。



確か…… 飯田は、俺に好意を持っていた。



違うかな。


告白とか…… されたっけなぁ。





喜多先生にその話をすると、“告白されてばかりだから忘れて当然だよ”と俺をからかった。



1年生の神田は、何度か俺と一緒に写真を撮ったことがあった。


かっこいい先生がいるんだ、と言って、お姉ちゃんに写真を見せたことがきっかけで……

俺に手紙を書いたようだ。





まだ“神田由利”が結婚していないことを知り、俺は少し気が重くなった。




たっくんのことを“まだまだだ”なんて言いながら、俺だってまだまだだ。







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