白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「明日には帰らないといけないんですよ」
力の牧場へ向かうバスの中。
隣の席に座っているのは、専門学校の先生である新谷翼先生。
恩師でもあり、桃子ちゃんの恋の相手でもある。
「本当はもっとゆっくりしたかったんですけど」
残念そうな顔でそう言った翼先生は、俺が直に恋をしてしまった頃を思い出させた。
好きになるつもりがなくても、好きになってしまう。
その相手が教え子だとしても、止められない気持ちってあるんだよな。
「夏休みも忙しいんですね」
「そうですね。でも、今日と明日は休みが取れたので、良かったです」
直から聞いている限りでは、この翼先生は恋に不器用な奥手な男性、らしい。
……が、
会ってみるとちょっと印象が違う。
「まさか俺に声がかかるとは思わなかったんです。正直、悩んだんですが」
「翼先生は、卒業した生徒の引率ってことでの参加ですよね?」
俺がそんないじわるな質問をしたせいで、翼先生はどんどんキャラが変わっていく。
「え、まぁ。そうなんです。引率なんですよ。……というか、まぁ、そのはずなんですけど。いや、もちろんそうなんですけど」
クールな印象ではなく、お茶目でかわいい人だと思った。
恋に不器用だというわけでもなく、ちょっと慎重になっているだけ。
一歩踏み出すと、俺よりも積極的だったりして……