白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
愛花ちゃんというのは、花帆さんの娘さん。
2歳にしては、しっかりしているように見えた。
ちゃんと理解してるんじゃないかなって。
自分のお母さんがひとりで自分のことを育ててくれていること。
たくさんの愛情を送ってくれていること。
一瞬、よぎる。
七緒ちゃん。
お父さんのいない愛花ちゃんと七緒ちゃん。
結婚できなかった理由も、家庭環境も全然違うのに、愛花ちゃんの笑顔を見て、七緒ちゃんを想ってしまう。
七緒ちゃんの顔を知らないせいだ。
街ですれ違う女の子のほとんどが、七緒ちゃんを連想させてしまう。
「誠人ぉ~!お前、緊張しすぎ!」
先生は、花帆さんが持ってきてくれたシュークリームを大きな口でほおばった。
部屋に張りつめた緊張。
先生の柔らかい声で空気が変わる。
「だって…… 兄貴に彼女紹介するとかありえねぇし」
誠人さんは、ブツブツ言いながらまたコーヒーを飲んだ。