白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
翼先生は桃子ちゃんの気持ちを知っている。
知っていても、一歩踏み出すには勇気がいる。
俺だってそうだった。
直は俺を好きだということはわかってはいたが…… 不安もあった。
直の気持ちよりも自分の方が数倍大きいような気がしたりしてさ。
好きになればなるほど、そんなことを考えてしまう。
「あのですね。ここだけの話にしてほしいんですが……生徒が教師に憧れる気持ちって、本気なんですかね」
翼先生は、両手を膝の上で絡ませながら、低い声を出す。
とうとう本題に突入だ。
「それ、俺も悩みました。いつもそばにいて、何でも助けてくれるから生徒は教師に対して憧れることはある。でも、その気持ちがただの憧れなのか本気なのかってわからないですよね。でも、直の場合はちゃんと伝わったんです」
翼先生は、考え込むようにしてバスの背もたれに体重を預けた。
俺も同じようにもたれて、天井を見た。