白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
幸せになりたいってずっと思っていた。
小さい頃。
それはどうしてだろう。
別に幸せじゃなかったからじゃない。
多分、幸せだった。
でも、いつも初詣やクリスマスのお願いごとは、“幸せになれますように”だった。
小学校の卒業アルバムに書いた自分の好きな言葉も“幸せ”だった。
幸せって一体何なのか、子供の私はわかっていなかった。
今の私も、よくわかっていないのかもしれない。
でも、今の私は、“幸せになりたい”とは願わない。
今が幸せだと、心から言えるから。
ホテルの1階のワインショップで先生が買ってくれたシャンパンのミニボトル。
結婚祝いに頂いたグラスにピンクのシャンパンを注ぎ、乾杯した。
「あ、直は一口だけにしとけよ?」
「どうして?」
グラスにつけた口を離す。
「俺と直の赤ちゃんがいるかもしれないだろ?」
「あ!本当だ!!」
私はグラスに口を一瞬だけつけて、そのグラスを先生に渡す。
こういうことが嬉しいんだよね。
飲めないからって何もしないんじゃなくて、飲めないけどシャンパンで乾杯しようっていう先生の気持ちが。
惚れる。
まじで…… 好きだよ。
先生。