白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「翼先生と桃子ちゃんが同じ部屋…… やばいっすね」
「えっ!!何がですか!!何もやばくないですよ!!」
きっと直と桃子ちゃんはその話で盛り上がっているだろう。
時々聞こえる直の笑い声がとても嬉しそうだった。
「翼先生、それ……計画的でしょ?」
俺がいじわるを言うと翼先生は顔を真っ赤にした。
「それは絶対に違います!!でも、違うホテルにしようとは考えなかった。やっぱり俺は……」
ため息をついてバスの天井を見上げた翼先生。
「ちょっとうらやましいです。その感じ、懐かしい。今思い出すと泣けるくらいに懐かしいです。俺もずっと気持ちが言えないでいたから」
授業中、目が合うと元気になれた。
直が俺を見つめてくれていることに気付いてからは、俺はその視線にいつもドキドキさせられた。
灰色だった俺の心を色づかせてくれたのは、直だった。
好きだよって言いたかった。
言ったら、直はどんな顔をするだろうって何度も想像した。
喜ぶかな?
それとも、少し困った顔をするかな。
俺は、直に好きだと言えないあの時間、どんどん直を好きになっていたんだ。