白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「金払ってんだから、いいだろ」
3人のうち1人が、不機嫌な声でそう言った。
できるだけ俺は黙っていよう。
金森の時もそうだったが、生徒達は自分達で解決する力を持っている。
俺は、見守るだけ。
「金払ってなきゃ、大問題じゃん」
「お前ら、毎日頼んでただろ?ついでじゃなく、それだけの為に川端をコンビニに行かせてた」
「川端は優しいから何も言い返せなかっただけじゃないの?」
3人は、顔を見合わせた。
「別に、無理やり買いに行かせてたわけじゃない。でも、先輩だからってアイツが断れなかったんだとしたら、利用してたことになるのかな」
「川端を、いじめてたつもりはない。むしろ、かわいいから……」
3人はもう一度顔を見合わせて、頷き合った。
「利用していたつもりはないけど、川端が嫌な想いをしていたとしたら、俺達が間違っていたと思います」
1人が立ち上がった。
他の2人も立ち上がり、1年生に向かって頭を下げた。
「お前らにも、いつもいろいろ頼んでた。すいませんでした」
1年生は、黙ったまま頭を下げ返した。
夕日がどんどん赤みを増していく。
映画のワンシーンみたいだなって俺は1人で感動していた。
「相手の気持ちになるって難しいから」
俺がボソっとそう呟くと、みんなは、“青春ドラマの熱血教師みたいだ”と言って笑った。