白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「あんな風に無邪気な頃に戻りたいですね」
翼先生は、腕組みをしながら目を細めた。
視線の先には、水を頭からかぶって笑っている真崎君の姿があった。
「牧場での翼先生は、無邪気な笑顔でしたよ」
「そうでしたか?俺は、新垣先生がうらやましいです。俺も新垣先生みたいに学生達と同じ目線で過ごしていければって思います」
ちょっと嬉しかった。
俺は生徒達と同じ目線で物事を見たいといつも思っているから。
「桃子ちゃんを好きになったってことは、ちゃんと若い年代の気持ちがわかってるってことだと思いますよ」
「不安だらけですけどね。付き合おうって言ってからまだ数時間なのに、もうフラれることを想像してしまう」
翼先生は、俺よりも5つも年上だという。
俺と直よりも歳の差のあるカップル。
不安になるのもわかる。
「でも、2年間ずっと愛されてたんですよ。周りには、あんなイケメンがいるっていうのに」
俺は、ようやく静かになった真崎君達の方を見た。
そうだよ。
俺だって不安だった。
でも、たくさんの高校生がいるのに、直は俺を選んでくれた。
若くて、かっこよくて、自由な恋愛ができる相手がたくさんいるのに、直は辛い恋だとわかって、俺の胸に飛び込んでくれたんだ。
「そうか。そうですよね。要君と俺を比べて、俺が勝ってる部分はどこもないのに。どうして、桃ちゃんは俺を選んだんでしょう」
「俺もそう思ったことがあります。でも、俺が直じゃないとだめなように、直も俺じゃないとだめってこと。翼先生も、今はもう桃子ちゃんじゃないとだめでしょ」
照れながら、翼先生は空を見つめた。
美しいオレンジ色。
切ない色。