白いジャージ5 ~先生とラベンダー畑~
「俺はてっきり要君は彼女を連れてくると思ってたよ」
翼先生は、要君に彼女がいないことを知らなかったみたい。
「ちょっと大きな失恋をしちゃいましてね」
要君はこの旅に来てから冗談混じりにそんなことばかり言う。
それが心地良いというか、ちっとも嫌な感じじゃなく、先生も冗談で受け止める。
「おい、要君。その失恋をまだ引きずってるってことねぇよな?」
酔っている先生の低い声はいつもの倍怖くて、冗談だってわかっていてもゾクっとする。
要君は腰を浮かせて、先生から逃げようとする。
「おい、待てよぉ」
「すいません。許してください!!」
ふたりのやりとりが面白くて、私もみんなも笑っていた。
「俺の直だからぁ」
先生は、肩に回していた手で私の頭を引き寄せて、先生の頬に当てた。
やばいって。
ドキドキする。
お酒を飲んだ先生はちょっと大胆。
「俺と直の間には、誰も入れねぇんだよ」
充血した目がセクシーで、吸い込まれそうだった。
私はみんなの前でそんなことを言われて、嬉しいけど恥ずかしくて、何も言えないままうつむいた。