下心と、青春と
この二人の会話からすると、どうやら二人とも傘がないようだ。
しかも、会長が残念そうな顔をしている。
私は、敏感な方ではないが、コレくらいならわかる。
会長は、副会長と一緒に帰りたいんだな。
「では、私は昇降口で待ってます」
「ああ」
三年の昇降口は二年とは違う。
私は、副会長が行ってしまうのを待って、会長に自分の折り畳み傘を差し出した。
「な、なんのつもりだ」
「傘、貸してあげます。お二人とも傘持ってないんですよね?どうぞ。一緒に使って下さい」
「しかし、それでは……」
「私は、ここに置き傘があるんで、大丈夫です」
置き傘があるなんて、真っ赤な嘘だけれど、そうでも言わないと会長は納得しないと思ったのだ。
しかし、会長はまだ渋っているようで、眉毛を寄せている。
私は、とどめのつもりで、ニコッと笑って「どうぞ」と言った。
「……恩にきる」