下心と、青春と
「……あ、あれか。アンタ傘ないのか」
「……うん」
「これ貸してやる」
差し出された傘。
「剣之助くんの?」
「おう」
「……いいよ。私走って帰るから」
「ダメだろ」
ほら、と半分押し付けられる形で私は剣之助くんから傘を受け取る。
貴方の優しさが、すごく痛いってこと、剣之助くんに言っても分かってくれないだろうな。
話せば話すほど、好きになっていく。
どうすればいいんだろう。
そう思った瞬間、宇佐見くんに言われたことが思い出された。
まだ、失恋したって決まったわけじゃないもんね。
私は、一つ深呼吸をして、言った。