冬恋物語-Winter love-




売店で頼まれたものを買ったあと、私は屋上へと向かう。


手にはフルーツサンドとイチゴオレ、それとホットコーヒーとサンドイッチ。


ホットコーヒーとサンドイッチは自分の分。


細見が私をパシリにしたせいで、


せっかくできた私の新しい友達はみんな、離れていったのだ。


だから私は、細見と一緒に昼休みを過ごす。


「はい、どーぞ」


屋上の扉を開け、細見にフルーツサンドとイチゴオレを渡し、


私はヤツの隣に腰をおろす。


「自分だけホット?」


私の手にあるプルタブを開けた缶コーヒーの口からは、


微かに白い気体が立っていた。


その気体を隠すように、缶コーヒーに口をつける。


缶を傾けると、温かい液体が口の中に流れてきた。


「イチゴオレにホットは無かったもん」


温かい缶を両手で握りしめながら、隣に座っているヤツを見る。


「……」


ヤツは冷たいイチゴオレのストローをくわえながら、


私の手に握り締められた缶コーヒーを見つめていた。


「……やっぱホットがいい」


そう言ってヤツは私の手から缶コーヒーを奪い、


代わりに、飲みかけのイチゴオレを差し出してきた。


「……」


細見はいつも、私の飲んでいる飲み物を奪う。


そして、平然と飲むのだ。


それが間接キスだってドキドキしてるのは、私だけ?



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