冬恋物語-Winter love-
もう何ヵ月も疑問に思っていたことを、思い切って聞いてみることにした。
「ねぇ」
「……あ?」
細見の低い声が隣から聞こえる。
「どうしていつも私の飲んでるやつを取るの?」
「……」
「……」
「……じゃあ聞くけど」
少し間があったあと、ヤツは私の質問には答えず、逆に質問をしてきた。
「?」
「なんでお前は俺の飲みかけのやつを、嫌がらずに飲むわけ?」
「……」
そんなの決まってる。
他の男子が口をつけたのを飲むのは嫌だけど、
細見は嫌じゃないから。
「……理由、一緒だと思うけど」
私は多分、
細見が好きだから。
「そうかもね」
笑いながらそう返し、
缶コーヒーの上に置いてあるヤツの手に
そっと自分の手を重ねた。
「細見が私のコーヒー取るから、こんなに手が冷たくなった」
「……あっそ」
私の手を払いのけた細見の手は、
私の手を上からそっと包みこんだ。
細見の傷だらけの大きな手からは優しさと温かさが伝わってくる。
なかなか素直になれない私たちだけど
今日は少し、
近づけた気がする。
end