冬恋物語-Winter love-
とは言うものの、2週間で彼氏ができるわけがない。
「…ってわけなの、ねぇお願い。彼氏役やってくれない?」
私は隣の席の佐々木に頼みこんだ。
あまり男子とは喋らないけど、佐々木とは隣の席ということで時々話すのだ。
「彼氏役ねぇ……。別にいいけど」
「本当にっ?」
「あぁ」
私は小さくガッツポーズをした。
これでやっと、先輩から解放される。
そしてクリスマスイブの前の日、私の携帯に先輩からメールが来た。
明日と明後日どこ行きたい?
プレゼント楽しみにしといて
オレとデートできるなんて嬉しいだろ
絵文字も無いメールなのに、先輩のメールはなぜか他の人とは違う温かさがある気がする。
ただのナルシストな文章なのに、温かさがあるなんて。
なぜかはわからないけど。
だから私は毎年断れなかったのだ。
「……」
私は先輩に返事をしないまま携帯をパタンと閉じ、
制服のポケットにしまった。