冬恋物語-Winter love-
今日はクリスマスイブ。
街の大きなクリスマスツリーの周りは、
たくさんのカップルでうめつくされていた。
中学の頃から毎年、クリスマスイブとクリスマスにはここへ来る。
だけど、今日私の隣にいるのは先輩じゃない。
隣にいる彼の腕に自分の腕を絡ませ、私は佐々木を見上げる。
「お前さ、なんであの人と付き合わないんだよ?」
佐々木が私を見下ろしながら、そんなことを聞いてきた。
「……」
「好きなんだろ?」
「……」
私は佐々木の腕に自分の手を絡ませながら、
佐々木に先輩を重ねている自分に気づく。
「……乃絵留ちゃんっ!」
──!?
後ろから先輩の声が聞こえた。
「……先輩?」
おそるおそる後ろを振り向くと、息を切らした先輩の姿が見える。
「……ほら、行けよ」
佐々木は優しく微笑んで、私の背中をポンと叩いた。
「……ありがと」
佐々木の腕から自分の腕を抜き、先輩の元へと駆け寄る。
「乃絵留ちゃん、彼氏できちゃったのか〜」
先輩は悲しげに笑いながら、赤茶色の頭をポリポリとかいていた。
「ち、違うんです!」