冬恋物語-Winter love-
クリスマスイブがやってきた。
街の大きなクリスマスツリーの周りは、
たくさんのカップルでうめつくされている。
俺の隣には、片思い中の彼女がいる。
俺たちも、カップルのように見えているのだろうか。
赤坂は自分の腕を俺の腕に絡ませ、軽くもたれかかってきた。
その顔はどこか悲しげで、クリスマスイブには似合わない表情だ。
やっぱり。
やっぱりこいつは……。
「お前さ、なんであの人と付き合わないんだよ?」
俺は隣にいる赤坂に問い掛けた。
「……」
「好きなんだろ?」
「……」
沈黙を続ける赤坂はきっと、俺にあの人を重ねている。
「……乃絵留ちゃんっ!」
後ろからあの人の声が聞こえた。
「……先輩?」
赤坂と一緒に後ろを振り向くと、息を切らしたあの人がいた。
赤坂は最低なやつだ。
俺を振り回しときながら、その瞳はきちんとあの人を捕らえている。
「……ほら、行けよ」
俺は無理やり笑みを作って、彼女の背中をポンと叩いた。
「……ありがと」
俺の腕から赤坂の腕が離れていく。
その腕を掴み直すことはできず、赤坂を手放してしまった。
「……はぁ。何やってんだ、俺」
周りにいるたくさんの幸せそうなカップルも、
ライトアップされた街並みも、
陽気なクリスマスソングも。
何もかもが憎らしく感じる。
ふと、遠くにいる赤坂とあの人の姿が見えた。
幸せそうに笑う赤坂を見ると、まるで天使みたいだと思った。
やっぱり俺は赤坂が好きだ。
あいつだけは憎めない。
まだ微かに残っている左腕の温もりを感じながら、
俺は赤坂とあの人幸せを
心から願った。
end