冬恋物語-Winter love-


「千冬の部屋にもこたつ欲しいー」


千冬はそんな生意気なことを言いながら、


黄緑の布団がかけられたこたつに寝転がっている。


「てか、杏兄(きょうにい)離れてよ!」


千冬こそ、杏ちゃんから離れろ!


「嫌じゃ。千冬温かいもん」


杏ちゃんは寝転んでいる千冬の背中に、ピタリとくっついて離れない。


「ぶにゃー!」


千冬の馬鹿ー!


「……痛っ!」


私は思いっきり千冬の頭を引っ掻く。


「小梅、痛いやんか!」


怒られても、お構い無し。


「ぶにゃー!」


早く離れろー!


「痛いー」


しばらく千冬を引っ掻いていると、


杏ちゃんが千冬の頭に自分の顔を乗せた。


千冬と杏ちゃんは、さっきよりもピッタリとくっついている。


「にゃ、……にゃー」


杏ちゃん……。


私は仕方なく諦め、杏ちゃんの腕と千冬の胸の間に入り込んだ。


毎年毎年、千冬にだけは勝てない。


杏ちゃんが千冬を大事にしてるのはわかってるから……。


2人に抱き締められながら、私は千冬を見つめた。


なんて幸せそうな寝顔……。


来年こそは杏ちゃんを取り返してみせるぞと思い、


千冬のほっぺをペロリと舐めた。












end
< 26 / 37 >

この作品をシェア

pagetop