冬恋物語-Winter love-
「千冬の部屋にもこたつ欲しいー」
千冬はそんな生意気なことを言いながら、
黄緑の布団がかけられたこたつに寝転がっている。
「てか、杏兄(きょうにい)離れてよ!」
千冬こそ、杏ちゃんから離れろ!
「嫌じゃ。千冬温かいもん」
杏ちゃんは寝転んでいる千冬の背中に、ピタリとくっついて離れない。
「ぶにゃー!」
千冬の馬鹿ー!
「……痛っ!」
私は思いっきり千冬の頭を引っ掻く。
「小梅、痛いやんか!」
怒られても、お構い無し。
「ぶにゃー!」
早く離れろー!
「痛いー」
しばらく千冬を引っ掻いていると、
杏ちゃんが千冬の頭に自分の顔を乗せた。
千冬と杏ちゃんは、さっきよりもピッタリとくっついている。
「にゃ、……にゃー」
杏ちゃん……。
私は仕方なく諦め、杏ちゃんの腕と千冬の胸の間に入り込んだ。
毎年毎年、千冬にだけは勝てない。
杏ちゃんが千冬を大事にしてるのはわかってるから……。
2人に抱き締められながら、私は千冬を見つめた。
なんて幸せそうな寝顔……。
来年こそは杏ちゃんを取り返してみせるぞと思い、
千冬のほっぺをペロリと舐めた。
end