冬恋物語-Winter love-
外に出て息を吐くと、真っ暗な中に真っ白なモヤモヤが現れた。
赤いチェックのマフラーで口を覆い隠し、手を擦りあわせる。
やっぱり冬は寒い。
「黒河君が手伝ってくれへんから明日も放課後残らなアカンやん」
「あぁ」
「……」
「……」
街灯がポツリポツリと並ぶ夜道を2人で並んで歩く。
「……寒いなぁ」
「……」
隣を歩く黒河君の手が、私の手に触れた。
私の手は黒河君の大きな手に掴まれ、
彼のコートのポケットへと持っていかれる。
黒河君は冷たいはずなのに、なぜかとても温かい。
私が黒河君を好きなのは、
こういうところがあるからなのかもしれない。
寒い冬は嫌いだったけど、最近は好きだ。
君がそのポケットに私を招いてくれるのは、
この季節だけだから。
end