冬恋物語-Winter love-
「黒河君、何しとるん?」
もう何回も読んだ推理小説のページを捲ろうとしていると、
ふいに高梨が少し怒ったような口調でそんな質問をしてきた。
「見ればわかるやろ」
俺はまた、小説から目を離さずに答える。
「……仕事してよ」
「後でやる」
それから数分経って、急に高梨がキョロキョロしはじめた。
「なぁ、そろそろ帰ろ」
高梨の言葉を聞いて外を見ると、
俺は納得して小説をパタンと閉じた。
「あぁ」
いつのまにか、外は真っ暗になっていたのだ。
冬は日が暮れるのが早い。