ツギハギの恋

「ミリは人違いって言ってたけど。本当は夢前先輩のこと知ってるんでしょ?」


ユリの顔があまりにも真剣であたしは嘘をつき通すべきか困惑した。


「太陽くんが夢前先輩?」


黙ってしまったあたしにレミが追い討ちをかける。


「ミリ、ちゃんと話してくんないとあたしら勝手に先輩ボコりに行くよ?」

「いや、ボコんなよ……」


ユリも真面目な顔であたしに詰め寄る。


「ミリ、太陽くんが夢前先輩なの?」



少し考えてあたしはぽつりと口にした。


「太陽って言うのは偽名。名前はひなた。そんで夢前先輩と同一人物……」



これ以上、嘘に嘘を重ねるのはややこしい。
人物だけでも明確にしておこう。


沈黙してレミがおもむろに席を立った。


「……よし。じゃ先輩、ボコりに行くか」

「だからボコんなよ」

「てか、ミリはムカつかないの!?先輩と付き合ってたんでしょ!?なのに知らん顔されて!!有り得なくね!?」


レミの言葉に昨日のひなたの冷めた目を思い出し胸が痛んだ。


「……ひなたは悪くないの。忘れてるだけだから」



そう。
ひなたは悪くない。


「だからまた一から始めるの」


あたしは二人に向かって無理矢理、笑って見せた。
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