ツギハギの恋
信じられない。

非常階段の策に足をかけて屋上によじ登るにしてもそんなデンジャーなことやる奴いねーだろ……。



「よじ登ったって……落ちたら死にますよ!危ないですからやめてください!」

「うん。死ぬのはやだね」


半分飽きれと心配から注意してもひなたは素っ気ない。


「てか、何でこんな所に?」


尋ねるとひなたはストローを口から離してようやくあたしに顔を向けた。


「一人になりたいんだよ。教室にいると女の子達がチラチラ見てくるから欝陶しい」

「先輩がモテるからじゃないですか……」

「モテないよ」

「先輩が怖そうだからみんな声かけられないんですよ」


自分から口にしてムッとした。

これじゃヤキモチみたいだ……。


あたしは売店で買ったパンを取り出して口に詰め込んだ。

そんなあたしを見ながらひなたは黙ってジュースを口に運ぶ。



ひなたに彼女とか出来たら嫌だな。
それは勘弁だ。

て言うか、堪えられない。


チラリとひなたを盗み見るとシャツから鎖骨が覗き黒子が見えた。


いつかのひなたが消えない油性ペンの跡だと言っていた黒子……。


記憶を辿るとあれはあたしが付けたものだった。
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