ツギハギの恋
ひと気のない非常階段辺りまで来るとあっちゃんは振り返り立ち止まった。

あたしは覚悟を決めて唾を飲んだ。


「……何で無視してんの?」


あっちゃんの言葉に脳内スイッチを切り替える。
この状況で別れ話なんて、あたしが悪者になるしかない。


「あっちゃんさー……ごめんだけどちょっと距離置きたいんだよね」


沈黙を破ったあたしの言葉にあっちゃんは明らかにキレていた。


「……は?意味わかんねーよ」

「あっちゃんと付き合ってて何か違う気がしてさ。だからあたしら距離置こうよ」

「は?だから意味わかんねーよ!」

「中途半端なら別れてもいいよ?」

「ふざけんなよ!?」



あっちゃんの怒鳴り声があたしには可笑しくて堪らなかった。

テメーじゃねーよ
寧ろあたしのセリフだろ。

浮気したのはそっちだろーが。
何でテメーがキレてんだよバカか……。


腹が立ったので散々、あっちゃんを心の中で罵った。

そしてあたしは捨てゼリフを口にした。



「ふざけてないよ。あたしあんまりあっちゃんの事、好きじゃなかったみたいだし」



もう好きでも何でもねーし。

あたしは言い逃げするようにその場から足早に立ち去った。
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