私が海に還るまで
その人に手を引っ張られて連れてこられたのは
年季の入った団地だった
その一室に鍵を使って入る
部屋の中は綺麗というより何も物がなかった
生活に必要な最低限の物だけ置かれていて
例えば雑誌とか、他には花を飾ったりといった人間くささは全く感じられなかった
今にして思えば電車一駅分の距離くらいなんだろうけど
必死で長い距離を走ってきた私は畳にペタンと座り込んで息を尽きながら項垂れてしまった
疲れたからだけじゃなく
子供ながらに
とんでもない事をやってしまった
と自分に驚いていたから