私が海に還るまで
晩夏
その年の夏が終わる頃まで
私は一度も団地の一室から出ないで過ごした
シュウは終業式までは学校に通っていたし
夏休みに入ってもほとんど毎日、アルバイトに出て行った
一人の時、始めは居間にポツンと置かれているテレビを見ていた
どれだけ見てもママに怒られないし
ソファーもないから畳に寝転がってテレビを好きなだけ見る
ただ
ママに怒られなくて…
ママがいなくてラッキーだとか、そんな風には思ってなかった
それなりに家族を思い出して泣く事だってあった
それでも私がその部屋から出ていく事はなかった