私が海に還るまで
着いたのは予想通り沢山の墓が並ぶ寺だった
タクシーを降り傘を広げると寺の名前も確認せず、無言で前を行くシュウの足元だけを見て後に続いた
迷路のような墓石の並ぶ狭い道を縫い歩いてしばらく行くと、シュウがある墓石の前で立ち止まった
花束を手にしたまま墓石の前で少しの間、佇む
私は黙って見ていた
傘に響く雨の音を聞きながら
それはそんなに長い時間ではなかった
雨に濡れる墓の前にそっと花束を置くとそれで終わり
「帰ろうか」
振り返って私に言った