スカーレット

「あたしたち、愛し合ってたの?」

 この問いに、正樹は再び鼻で笑った。

「まさか」

 未だに消えない白い煙。

 気付けばまだ吸殻に火種が残っていた。

 気になってそれを潰す。

 手を引っ込めると香ばしいにおいのあとに、独特の嫌なにおいがした。

「俺たちは、さ」

 そう言って体をこちらに向ける。

 涅槃像のようなポーズだ。

「きっと寂しさを埋め合ってただけだよ」

「どういうこと?」

「親父が死んで落ち込んでたとき。俺が狙ってた高校に落ちたとき。姉ちゃんが進学を諦めた時。それから、まあ数え切れないくらい姉ちゃんを抱いたけど……求めてたのは辛いことがあった時期だった気がする」

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