スカーレット

 慌しくなる周囲。

 周りには知らない人ばかり。

 さっきのおばさんと、若い男の人。

 医者、看護士。

 医者が私に近寄り、軽く微笑んで告げる。

「十和田さん、ここ病院ですよ」

 そんなの見りゃわかるっつーの。

 っていうか、十和田って誰?

「はぁ。あの、体痛いんですけど」

 無愛想に答えると、看護師がベッドを起こしてくれた。

 おばさんと若い男がギラギラした目で詰め寄ってくる。

「紀子……心配したんだから」

 ……はぁ、そうですか。

 っていうか、紀子って誰?

 人違いじゃない?

「三日も眠り続けてたんだぞ」

 ……三日?

 どうして?

 それより、さっきから何なの?

「あの、紀子って誰ですか? ていうか皆さん、人違いしてません?」

 私の言葉に、みんなの顔が凍りついたのがわかった。



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