スカーレット

 よくわからなかったけど、困ってるってことはわかった。

「お金を下ろすのは明日にして、先に買い物に行かれたらどうです?」

 だけど紀子は恥ずかしそうな顔をしてこう言ったんだ。

「今、財布に500円しか入ってないんです」

 思わず笑っちゃったよ。

「買い物にいくら必要なんですか?」

「2000円くらいかなぁ」

 財布に500円しか入ってない社会人なんて、信じられなかった。

 でも、そんな紀子をかわいいと思ったんだ。

 それで下心が働いたんだろうね。

「良かったら、お貸ししますよ」

 ある意味、ナンパだったんだ。

 それからスーパーで一緒に買い物をして、紀子が雅代さんの店の手伝いをしてることを知った。

 せめてものお礼にって、こっそりタダ酒飲ませてもらったのがきっかけってわけ。

 それからは通ったよ。

 紀子目当てでね。





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