スカーレット



 クスクス笑いながら話す勝彦。

 彼との出会いは、恥ずかしい日常のワンシーンだった。

「でも、お母さんは店で出会ったって……」

「紀子がその経緯を隠したがったんだよ。怒られるからじゃないかな。店に入ったら普通に初めましてって言われた」

「あはは、なんかごめん」

 懐かしそうに話す彼の顔は優しくて、こんな間抜けな私を愛してくれる。

 やっぱり、悲しい過去は隠しておこう。

 そう思った。




 次の日曜日、奈津子に実家へ来てもらった。

 理由は、私の借金の理由を探るため。

 親友である彼女なら、色々知っていると思った。

 呼び鈴が鳴り、仕事が休みの正樹が玄関へ向かう。

 数分後、私の部屋へ二人でやってきた。


< 59 / 110 >

この作品をシェア

pagetop