スカーレット

「他にもね、結構パンチの効いたことがわかったの。お母さんには黙っておいて欲しいんだけど、子供を堕ろしてた」

 二人は黙ってまた目を合わせた。

 まるでアイコンタクトを取っているように。

 奈津子どころか正樹もそれを知っていたようだ。

 こんなことを話せる仲なら、案外正樹とは仲良しだったのかもしれない。

「もう一つ。あたし、借金があった」

 二人はまた黙る。

 これも知っていたということだろう。

「貯金も下ろされてて、全部で200万。何に使ったか、心当たりないかな?」

 先に声を出したのは正樹だった。

「それだけ調べてればもうわかってんだろ? 酷いことがあったって。辛い過去なんか探るなよ」

 咎めるように言う正樹。

 でも私は知らないと気がすまない。

「知りたいの! 知らないままなんて、怖いのよ」

「俺は知らないほうが幸せだと……」

 お互いの口調は強く、軽い姉弟ゲンカに発展しようとした時。

 正樹を止めたのは奈津子だった。


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