スカーレット

「なっちゃん……!」

 奈津子は意を決したように座り直した。

 正樹が黙る。

「それだけわかってるんだったら、話す」

 正樹の視線が奈津子に向けられた。

「大丈夫よ、まーくん。わかってるから」

 わかってる?

 それにしても、まーくんって呼ばれてるんだ。

 ガラにもないあだ名に、この緊迫した空気を乱して笑いそうになった。

 堪えて奈津子の顔を見る。

「紀子ね、付き合ってた男に騙されたの」

 付き合ってた男?

 騙された……?

「かっちゃんに?」

 奈津子が首を横に振ったのを見て一安心。

 そりゃそうだ。

 勝彦と付き合い始めたのは一ヶ月前。

 借金をしたのは5月の半ば過ぎだった。

 じゃあ、相手は?


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