スカーレット


 早田勝彦です。君の、恋人だったんだ。

 彼はどんな思いでこの言葉を口にしたのだろう。

 私のほうが彼を愛していなかったなんて、信じられない。

 今ではこんなにも彼に満たされているというのに。

 バカだよ、旧・紀子は。

 こんなにイイ男を振るなんて。

 それとも角田一郎を引きずっていたとでもいうの……?

「もしあたしの記憶が戻ってたら、どうするつもりだったの?」

「さあね。考えてなかった」

 なんて危険な大勝負なんだろう。

 記憶が戻らなくて良かった。

 一週間だったけど、私は愛し愛されて幸せだった。

 だけど、嘘だとわかってしまったから……。

「実家に、帰るね」

 ケジメをつけなければならないと思う。

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