スカーレット

 新しいメールから繰り下げて、やっと見つけた「角田一郎」の文字。

 日付は6月6日。

 簡素なメールだった。

〈ありがとう。おかげで今のところ何とかなってるよ〉

 これが最後のメール。

 いろんな意味に取れる。

 自分は何と送ったのだろう。

〈あれからどう? もう来ない?〉

 はあ、意味がわからない。

 文字には打たない旧・紀子と彼だけにわかる、暗黙の意味が込められている。

 記憶のない新・紀子には、何が何だかわからない。

 来ない? って、どこに、誰がよ。

 それにしても、騙されたと知って警察に被害届など出さなかったのだろうか。

 出していたとしても、金が戻ってくるわけではないだろうけど。


 思い立って、私は寝室のパソコンを立ち上げた。

 インターネットで検索エンジンを開いて、入力。

「角田一郎」

 検索。


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