スカーレット

「この書類は、病院のために頂く書類です。もし女性の意思だけで中絶をして、後になって男性側から“どうして勝手に中絶したのか”と言われるのを防ぐための書類なんです。もし書類に虚偽の内容が記載されていたとしても、それが当院の責任にはなりませんから」

 なるほど……。

 でも、この同意書があるおかげで、私はまた一歩、大きく真実に近づくことができる。

 院長が指で押さえているあの書類。

 動悸が治まらない。

 冷や汗がこめかみを通過したのがわかった。

「以上をご理解頂いた上で、それでも本当に参考にされたいというのなら……」

 院長の指と一緒に、同意書がスッとこちらにやってきた。

 生きるか死ぬかの勝負をしているような、激しい緊張が走る。

 頭のてっぺんからつま先まで、全身がくまなく痺れるような感覚。

「相当な覚悟をもって、この同意書のサインをご確認ください」

 そして、院長の指が離れた。

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