ヤバいくらいに溺れてる
「いくらよ」

「安く見積もって10万くらいかな?」

「はあ? そんなの払えるわけないじゃん」

「あれ、払おうとかって一瞬でも思ったんだあ。金なんていらねえし。明日、早いから。俺、もう寝るわ。おやすみ」

陽向が、壁側に顔を向けると手をひらひらと振った

「ちょっと! どこで寝ようとしてるのよ」

「ベッドだけど。何か問題がある?」

「ありまくりよ。そのベッド、あたしのベッドなんだけど」

「オバサンは、床で寝て。俺がベッドを使うから…はい、ではおやすみ」

振りかえることもなく、陽向が答えた

「まだ寝ないでよ! あたし、床で寝るなんて嫌だからね」

「ならシングルのベッドで、一緒に寝る?」

「はあ? あり得ないんですけど」

「じゃあ、床で寝ましょう」

「あんたが床で寝なさいよ」

「嫌だ。俺はベッドで寝る。モデルだからな。身体は大切に扱わないと。あんたに給料を払えなくる。あ…給料いらないなら、床で寝てやってもいいけど?」

くるっと首をひねってあたしの顔を見てきた

にやりと笑っている

くそぉ…給料いらないなんて言わないのをわかって言ってるなあ

頭にくる!

何なのよ、こいつ

ガキのくせに、偉そうで…ていうか、偉いんだろうけど

「ああ…もうっ!」

あたしは髪の毛の掻き毟ると、両足をバタバタと動かした

「好きにすれば!」

「じゃあ、明日4時に起こして。4時半には出発しないとだから。あと俺の鞄の中に、学校の制服も入れておいてね。撮影が終わり次第、学校に行くから」

「わがままっ」

「我儘なのはそっちだろ。俺じゃねえし」

「自分勝手!」

「それも俺じゃねえ。あんたのほうだろ」

くぅ…むかつく! あたしを馬鹿にしてえ

覚えてなさい

年上のあたしを馬鹿にした罪は、消えないんだから
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