ヤバいくらいに溺れてる
『今から行けば、5限と6限に間に合うから』

そう言って、陽向が高校に登校していった

あたしは車で、自分のアパートに戻ってくると、よろよろと室内を歩いた

ベッドに吸い込まれるように、手に持っている鞄を放り投げると、そのままばたんと倒れた

「嫌だ…男の臭いがする。臭いっ、最悪」

男の放つ独特のにおいが、枕とシーツから香ってきた

それと一緒に、甘いコロンのような匂いもする

この匂い…陽向からしてた

朝、シャワーを浴びて出てきた陽向から香ってきた匂いだ

「ねっむい」

あたしは重くなった瞼を閉じた

陽向には恋人とかいるのかな?

別に気になっているわけじゃないけど、いたら…悪い気がする

恋人がいるのに、あたしと一緒に暮らすなんて

あいつがあたしを好きだとはやっぱり思えないし、有り得ない

好きな人にあんな冷たくできる?

『オバサン』って言えるか?

好きな人に『オバサン』って……なんかむかむかしてきた

あたしはぱちっと目をあけると、脱ぎっぱなしの赤いワンピースを眺めた

指一本で、潮を吹いたのは初めてだった

絨毯の染みができた箇所に目をやった

今は、きれいに乾いている

昨日、陽向にイカされた形跡はどこにも残っていなかった

身体の奥がゾクッとする

「やめてよ。違う…ただ楽しんだだけよ。あたしの反応を面白がっただけ」

そうよ

ガキだから、性に興味があるだけ

男なんてみんなそうよ

ヤリたいだけで、気持ちは伴ってないのよ
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