ヤバいくらいに溺れてる
ぐっと近づく距離
つい数時間前に知り合った男が、ホテルであたしの唇を奪う

友人が幹事するコンパで知り合った男

あたしのセットした髪を男の大きな手で激しく乱し、あたしの唇を吸う

キスをしながら、ベッドに倒れこむと肩にかかっている鞄の中から、携帯の振動が伝わってくる

男も気づいたのだろう

キスをやめて、身体を離すとあたしを見下ろしてきた

「無視していいから」

あたしの言葉に男はにこっと笑うと、あたしの上に乗りかかった

「いい加減、電話に出ろっつうんだよ!」

男の背後で、不機嫌な大きな声が聞こえる

あたしにキスをしようとしていた男の肩が、びくっと大きく跳ね上がるのがわかった

聞き慣れはじめている声にあたしは眉をひそめると、男の後ろにいる人間の姿を確認にした

制服姿の陽向が、怖い顔をして突っ立っている

携帯を左手に持って、あたしを睨みつけていた

「は? なんで?」

「GPS! 社長から携帯を貰っただろ」

「あ…そっか」

あたしの使っている携帯は、陽向の母親から貰ったものだった

未成年で自由に携帯が買えないからって、あたしにくれた携帯だった

「おいっ。いつまで乗っかってるつもりだよ」

陽向が、男に向かって低い声で言った

男は「ひい」っと小さい悲鳴をあげると、足を縺れさせながら走って部屋を出て行った

「…で? この置き手紙、ナニ?」

小さなメモ用紙に、ボールペンで書いてあるモノを陽向が、ぺらぺらとあたしの眼前で揺らした

ベッドに倒れたままのあたしは身体を起こすと、メモを見た

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