ヤバいくらいに溺れてる
勢いのあるキスに、あたしは窒息しそうになる

陽向の胸を叩くが、すぐに手首をつかまれて上から押さえつけられた

「あんたの代わりはいねえんだよ。二度と俺に、マネの代わりを訴えるな」

男と見つめあうのがこれほど苦しいなんて、あたしは初めて知った

まっすぐに見つめられる視線が痛い

陽向の瞳の中に映る自分の顔が情けなくて、惨めな女に見えた

「聞いてんのかよっ!」

「聞いてるってば」

あたしは陽向から視線をそらして、天井を見つめた

「おい、わかってんのかよ」

「わかってるって言ってるでしょ!」

あたしは怒鳴ると、陽向の手を振りほどこうとした

「なら、もう今後一切、俺にアパートの物件を見せるな。いいな」

「あれは…桜嗣さんがあんたに渡してくれって言うから…」

「そういうときは受け取って、俺の目に触れる前に捨てろ」

「どうして?」

「俺が見たくないからだ。マネだろ。俺が嫌がる行為をするな。俺が喜ぶことをしろ」

「ナニ…それ。喜ぶことなんて…」

あたしの手首を握っている陽向の手に力が入った

痛みで、あたしの顔が歪んだ

「男が喜ぶ行為……知ってるんだろ?」

やっぱり…こいつも所詮、男だ

欲望が支配する身体なんだ

「シたければ、すれば。この身体でいいなら、どうぞ!」

陽向がニヤリっと笑うと、手を緩めて立ち上がった

あたしに背を向けると、乱れた制服を整え始める

あたしは起きあがると、陽向の背中を眺めた

「ちょ…しないの?」

「ああ、しないね。今のあんたに欲情しない。心から欲しいとは思わねえよ」

< 28 / 62 >

この作品をシェア

pagetop